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一本一本の矢に集中していると、思いのほか体力をつかう。
いや、弓を引くのにそれはもうとてつもない力が必要なのだが、それ以上に疲れたと感じる俺がいた。
流れる汗を拭いながら、からっと晴れた空を見上げる。
雲ひとつない晴天、雨が降ることは無いだろう…
今日は昌浩は物忌みが明け、まだ外が薄暗い時間に出仕していった。
それを見送った俺は露樹さんを手伝うことも出来ず十二神将の一人である玄武と他愛無い話をしたり碁を打ったりと時間を潰していたが、一度異界?に戻るといって消えてしまった少年に別れを告げて、外に出て日課となりつつある弓を手に取ったのだった。
滴る汗を手ぬぐいで拭っていると、俺と露木さんしか居ない静かな空間に声変わりのしてない高めの声が響いた気がした。
それと同時に門の開く音が聞こえたので、どうやら昌浩が帰ってきたらしい。
「昌浩、帰ってたんだな」
「はい先程。桜満はずっと何してたんだ?」
「俺は変わらず弓を射ってたよ。白兎もお帰りなさい」
「あぁ」
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