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「居た!!」
雑鬼たちが言っていた場所に行けば、その言葉通り人が倒れていた。
服装は質素なものだが、見たこともない奇妙な服装だった。
「気を失っているのか?」
眉をひそめる男は、時折苦しそうに呻き声を上げていた。
そんな男を見ながら、おかしな異変に気付いた。
「もっくん、この人汗が凄いね」
それがどうしたと言わんばかりに、怪訝な顔をされたが気にしない。
「七月に入ったとはいえ、まだまだ暑い。
なのにこの人は、厚手の衣を纏っている」
俺だって、いまだ風通しの良い麻衣だ。
「!それは変だな」
「うん。何処か北のほうから来たのかな?」
それにしても、このまま放って置くのも可哀想な気がする。
なんと言っても、じい様に文句を言われそうだ。
それだけは自分のためにも遠慮したい。
「晴明に見せるか」
天下の陰陽師であるじい様が居る場所では、何も出来ないだろうし安心だ。
「じゃあ、もっくん」
「んあ?」
首を傾けながら物の怪は、俺を見上げた。
その赤い瞳を見下ろして、俺の素晴らしい案を伝える。
「この人運んでよ、紅蓮」
「はいっ!?」
俺の身体じゃこの人運べないけど、紅蓮だったら体格も良いしね。
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