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敷かれた布団に横になる青年は、今にも起きだすかのように瞼を振るわせていた。
「・・・・っ!!」
暫く見ていると、青年はガバリと起き上がり、何かを探すように辺りを不安げに見渡した。
そりゃあまぁ、見知らぬ部屋に寝かされてたら不安になるだろうな。
辺りにさ迷わせていた視線が、俺の居る場所を映した。
だが、残念ながら俺の姿を見ることは見鬼の才を持たない唯人には難しいのだ。
「う、さぎ…?」
「!?」
俺が見えるのか!?
見えるのなら、こいつは相当強い見鬼の才を持っていることになるが…。
「もっくーん、そろそろ起きたぁ?」
間の抜けた昌浩の言葉に相手はそちらに顔を向けた。
少し気まずい雰囲気が生まれた。
「あっ、目が覚めましたか」
「ここは…何処ですか?」
寝起きだったせいかボンヤリした表情だったそいつだが、微かに表情が変わった。
それは微妙な眉の動きや瞳、身体の強ばり方といった細やかな違いなのだが…。
「此処は都にある俺の家。俺、安倍昌浩…君は?」
「?俺は草木桜満、あの何故俺が此処にいるのか分かりますか?」
『草木』という名字はあるが…
何か違う気がする。
見慣れない服といい、彼の雰囲気といい…。
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