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「まぁでも、俺は一途じゃないんですけどね。 俺、神話とかが好きなので他にも神様とか十二神将にも興味はあります」 「ほほぅ、神将を?」 陰陽師が好きだ、でも妖怪も好きだ。 神話が好きで、八百万の神にいつも感謝をしていた。 「はい、東西南北を司る四神も好きです。でも俺はやっぱり、そうだな…騰蛇」 視界の隅で兎が動いた気がした。 晴明さんが扇で何やら口元を隠して笑っている。 昌浩が驚いたように目を見開いていた。 青竜は…相変らず眉間に皺を寄せていたが…。 「…調べた本などには詳しいことは書かれてはいませんでした。 恐怖や恐れ、驚きなどを司る凶将…だけど俺は恐怖するのは可笑しいと思うんです」 人は誰も火を見て恐怖する。 それは自分の中にある邪悪な心に気づきたくないからだ。 凶将『騰蛇』は火神。 全てのものを焼き払う炎。 「炎を恐れてはいけない。その炎は、浄化の炎だ。 邪悪なものを全て焼き払ってくれるもの。 怖がる必要はどこにも無い…」 ふと清明さんの口元が微笑を湛えていることに気が付いた。 はっ、俺はまた自分の恥ずかしい想いを語ってしまったみたいだな…。 熱くなりすぎて周りが見えてない。 清明や昌浩に迷惑をかけてしまった…青龍にも、白い兎のような物の怪にも。 「すみません、俺の長話を聞かせてしまって」 「いや、気にせんでください」 「そういえば…十二神将を使役しているのであれば騰蛇も?」 「えぇ」 「煉獄の炎、か。 ……綺麗なんだろうな」 その青年の言葉に、物の怪は目を見張った。 騰蛇に会いたいなんて言う奴は今まで居なかったのだ。 そして煉獄の炎を綺麗だなんて言ったのも、この世に一人だけだった。
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