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「いづれ会う事もありましょう。 さて、もう夜も遅い。 桜満さん、部屋へ案内しましょう」 ほけほけと笑う晴明に、兎?が慌てて止めに入った。 「っな、お前ももう年なんだから寝ていろ!! 青龍に怒られてもしらないぞ!!」 「…何、案内するだけじゃないか」 「煩いっ。俺が案内する!!」 「もっくんがぁ?」 昌浩の呆気にとられた声を聞くに、[もっくん]が人を案内するというのは不思議な事なのだろうか。 「じゃあ、頼むとするかのう。桜満さんのことは息子夫婦に伝えていますので、ごゆっくりお眠り下さい」 「いつの間に…。あの、本当に有難うございますっ。ついでに何ですが、俺のことは呼び捨てでお願いします」 孫のように接して…と言えば、何か変な感じがするのだが。 まぁ、普通に接してほしい。 頭を下げ、ぽてぽてと尻尾を振って歩いていく兎のもっくんに慌てて付いて行く。 一言も喋りはしない。 そりゃ最初の頃は驚いたが、ここが平安時代で、安部晴明の邸なら驚く事はなにも無い。 夜の都に出れば、わんさかと妖や物の怪がいるのだろう。 少し楽しそうに思うのは、俺がそういうのが好きなせいだ。 「お前、」 「はい?何ですか、もっくんさん」 足下から、子供のような高い声が聞こえ、意識を戻した。 「もっくん言うな!!」 「それでは何とお呼びすれば?」 もっくんと呼ばれるのが嫌なら、何と呼べば良いのだろうか。 もっくんとは、何かあだ名のようなものなのか?
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