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体内時計のせいか、いつもと変わらない時間に起きてしまった。
時計なんてないが、朝の空気が同じなんだ。
何もすることがなく、部屋を出て歩いていると居間(この時代でも居間というのか?)についていた。
そこでは、一人の女性が忙しなく朝食の準備をしていた。
「まぁ」
声を掛けるべきか悩んでいると、女性の方から話掛けてきた。
「おはようございます。
あの、すみません…これから少しばかり迷惑をかけると思います、草木桜満といいます」
「あらあら、そんなに畏まらなくてもいいのですよ。
義父上から話は聞いていますわ。
何も出来ませんが、ごゆっくりなさって下さいな」
「ありがとうございます」
優しそうな方で良かった。話によれば、ご婦人はどうやら昌浩の母親のようだった。
まだ良く分からないが、昌浩は母親似というわけではないらしい。
「朝餉の支度は出来ています。
お召し上がりになりますか?」
「!?いえ、一家の当主を差し置いてそんなこと出来ません。
私は最後で大丈夫です。
ありがとうございます」
それよりも何か出来ることはないのか。
そう尋ねれば、困ったように綺麗な眉を寄せた。
どうやら、男に手伝わせるようなことは出来ないらしい。
男子台所に入るべからずのようなものか?
だが、そんな事で俺は諦めない。
そうすれば、婦人は『それでは』と申し訳なさそうに昌浩を起こしてくれと言った。
「わかりました。
すぐに起こしてきます」
何も力になれない俺だが、昌浩を起こすことなら出来る。
少しずつでも、安部家の力になれたら良いが…
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