2/8

247人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
体内時計のせいか、いつもと変わらない時間に起きてしまった。 時計なんてないが、朝の空気が同じなんだ。 何もすることがなく、部屋を出て歩いていると居間(この時代でも居間というのか?)についていた。 そこでは、一人の女性が忙しなく朝食の準備をしていた。 「まぁ」 声を掛けるべきか悩んでいると、女性の方から話掛けてきた。 「おはようございます。 あの、すみません…これから少しばかり迷惑をかけると思います、草木桜満といいます」 「あらあら、そんなに畏まらなくてもいいのですよ。 義父上から話は聞いていますわ。 何も出来ませんが、ごゆっくりなさって下さいな」 「ありがとうございます」 優しそうな方で良かった。話によれば、ご婦人はどうやら昌浩の母親のようだった。 まだ良く分からないが、昌浩は母親似というわけではないらしい。 「朝餉の支度は出来ています。 お召し上がりになりますか?」 「!?いえ、一家の当主を差し置いてそんなこと出来ません。 私は最後で大丈夫です。 ありがとうございます」 それよりも何か出来ることはないのか。 そう尋ねれば、困ったように綺麗な眉を寄せた。 どうやら、男に手伝わせるようなことは出来ないらしい。 男子台所に入るべからずのようなものか? だが、そんな事で俺は諦めない。 そうすれば、婦人は『それでは』と申し訳なさそうに昌浩を起こしてくれと言った。 「わかりました。 すぐに起こしてきます」 何も力になれない俺だが、昌浩を起こすことなら出来る。 少しずつでも、安部家の力になれたら良いが…
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

247人が本棚に入れています
本棚に追加