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* * * 「たしか、この部屋だったか?」 昨日通された部屋なのに忘れたのか?と馬鹿にされそうだか、何分この家は敷地が広い。 昨日の今日で覚えているのかあやふやだ。 だが、襖を挟んだ向かいで聞こえた声に此処が昌浩の部屋だということが分かった。 声というよりもこれは…うめき声? 「っ、開けるぞ!!」 うめき声に慌てて、襖を開けたがなんて事無かった。ただ、白兎が昌浩の腹の上に寝っ転がっているのが苦しかったのだろう。 白兎をどかそうかと考えていると、昌浩が『重い』と呟いて目を覚ました。 「…なんだ…夢か」 未だ寝呆けているのか、俺の存在に気付いていないようだった。 安堵したようにため息をつく昌浩を側で見ていると、昌浩はどうやら自分の腹の上で眠っている白兎の存在に気付いたようだ。 「……おい」 些か不機嫌そうな声色の理由は、安眠妨害をされたイラつきからだろう。 長い髪が汗で張りついているのを見れば、大層苦しかったことが見てとれる。 「かー、かー、かー」 大口を開けて幸せそうに眠っている白兎を冷めたように見下ろす昌浩に『あ、切れた』と思った瞬間、ゴンという小気味よい音が部屋に響いた。 「あの、昌浩?」 「あっ、おはようございます草木殿」 突然の痛み白兎は声も出さずに悶えていた。 その姿だけを見ていると可哀想に思うのだが、自業自得なのだ。 白兎は置いといて、昌浩に声を掛ければ俺を見て驚いた。だが、すぐさま何も無かったかのように笑みを浮かべて挨拶を交わした。 …以外と腹黒そうだな。 「露木さんが、朝食の準備が出来たと」 「わざわざありがとうございます。 それでは、支度をしてから行くと母上に伝えていただけますか?」 「分かった。 …なぁ、その敬語止めないか? もっと砕けた話し方のほうが俺は嬉しいんだが」 妹がいるが、俺に一度も敬語で話した事なんてない。それなのに、妹よりも下の昌浩に敬語で話しかけられるのは何か変な感じだ。 「え、でも」 「俺からの頼みだ。 それに桜満と呼んでくれ」 その方が俺も話しやすい。敬語というのは慣れているが、また違った堅苦しさがあるんだ。 「分かりました、桜満さん」 「ま…敬語は少しずつだ。 よし、じゃあ早く準備してこい。せっかくの料理が冷めるぞ」 そういえば、昌浩は慌てて準備をしだした。 その後ろに白兎がついてまわる。 小さい子供と小動物のコラボは癒しだな。
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