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「・・・・?」 普通は最後の悪あがきに我武者羅に突っ込んできたりするのではないか? もしかして大人しい妖怪で、調伏するのは可哀想だったりして…。 「害が無いなら、解き放ってやってもいいんじゃねぇの?」 そうした方がいいのかもしれない。 こんなことに時間を食われるよりは、先ほどね光が落ちた場所に行き原因を突き止めたほうが良い気がする。 というより、その方が良いに決まってる。 じい様は絶対に千里眼でこの事を見ているはずだ!! 「解くる不動の縛り縄、ゆるまり来る、アビラウンケン!」 どうせ狸は、出てもない涙を拭いながら『あぁ、昌浩や…じい様は悲しいぞ』とかグチグチ言うんだ。 「あーっ、むかつく!!」 「「!?」」 突然上げた怒鳴り声に、物の怪と妖怪は驚いた様子で身体を揺らした。 「あ、ごめん。もう行っていいよ。追い掛けてごめんね」 しきりに頚木を下げてから、ガラガラと走り去っていった妖怪を見送ったのは数刻前。 今は、光芒が落ちてきた場所へと逆走中である。 「この道であってるのかっ、晴明の孫!!」 「孫言うな!!勘だけど、こっちだと思うっ」 陰陽師の勘というのは鋭い。 それ以上に晴明の後継の昌浩は、そこらの下手な陰陽師より勘が鋭いのである。 「っ」 「もっくん?」 肩に乗っていた物の怪が素早い動きで、肩から飛び降りる。 その瞬間、あらぬ方向から聞き慣れた声が聞こえた。 「孫ーーーっ」 「わぁぁああっ!!」 無数の異形たちが、空からボトボトと降ってきて昌浩を押しつぶす。 離れた場所に避難した物の怪が、不憫そうな顔で昌浩を見ていた。 「おのれ・・・っ」 「なぁ、孫。あっちの方で人が倒れてたぞ」 雑鬼の一匹の発言にガバりと立ち上がると、まだ乗っていた雑鬼たちが転がり落ちた。 「人が倒れてたって!?」 「いきなり立ち上がるなんて酷いぞ、孫!!」 酷いなんて、大量に人の上に落ちてきた奴の言うことかっ!! 怒鳴りたいのを押さえこんでいると、見兼ねた物の怪が雑鬼たちに聞き返した。 「人が倒れているとはどういうことだ」 雑鬼代表であろう3本角の鬼が昌浩の肩から物の怪を見やる。 「あのなぁ、さっきピカーって光っただろ?」 「俺達、気になってその場所に行ったんだ!!」 「そしたらそいつ、変わった服装してた!!」 雑鬼たちが騒々と騒ぎたてる。 「百聞は一見に如かず、だ」 「うん、俺達も見に行こう」
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