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「マジ危なー。試験受けもしないで不合格とか、洒落になんねーし」
さっきまで並ぶどころか最後尾を見つけることも出来なかった人の波に、二人は何の障害もなく並んでいた。
赤ローブ達に感謝すべきだろう。
しかし、成り行きで一緒になった金髪――シャンクと名乗った――が、レドにとって気になることを言った。
「シャンク」
「いきなり呼び捨てかい……。俺、16歳。お前、見た感じ年下だろ。さん付けシナサイ」
(む、奇妙なことを言う)
「俺も今年で16歳だが」
「同い年かよ!
ウッソ、見えねぇな……精々、13、4かと」
確かにレドの身長:164cm、シャンクの身長:184cm。誤差20cm。
シャンクに比べれば低いが、身長自体ははそこまで低くない。
つまり、精神的な部分が原因かと思われる。
「まあ良いや。じゃあ俺もレドって呼ぶぞ」
「ああ、俺はレドだからレドと呼べば良い」
今度はシャンク奇妙そうな顔をして、それから「変なヤツ」と笑った。
レドは、また変なことを言ってしまったかとも思ったが、何となく、悪くなかった。
(うむ、いい感じ)
そこで、シャンクに聞きたいことが有ったのを思い出した。
「シャンク。試験とは何だ?」
「何って決まってんだろ…………って、お前まさか」
シャンクが、ひきつり過ぎて笑みではなくなった顔になる。
無理もない。
「ふむ、試験なんてあるのか。初耳だ」
「やっぱりィィィ!」
『ただ今より開場します!入場した後から各試験会場に別れてください!
繰り返します……』
更に口を開こうとしたシャンクを遮るように増幅された誘導係の声がぶつけられる。
同時に列が動き始めた。それこそ浜に押し寄せる波のように。
クソッ、とシャンクが吐き捨てる。
「試験は二種類あって……ちッ、レド!魔法は使えるか!?」
レドのすぐ隣のはずだったシャンクと徐々にずれていく。
(魔法?そんなものは……)
「使えない」
「体術は!?」
「使える」
「じゃあ『体術』だ!!体術の試験会場に行け!
間違っても魔法の試験会場に流されんじゃねぇぞ!!」
向こうでまた会おうっていうかお前魔法使えないって何しに来たんだよせめて試験の内容は分かっとけよあーもう信じらんねぇぇ―――。
そんな感じでシャンクはフェードアウトしていった。
……。
また後で会おう。
レドは器用に人に乗りながら、体術の試験会場を目指した。
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