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試験官の言葉を聞くや否や、動いた影が四つ。
全て、先程の挑発で頭に血が上った奴等。
示し合わせたわけでもないだろうが、綺麗に四方から殺到していく。
狙われた試験官も、あの巨きな体躯で避けられはしないだろう。
――だから、
――避けなかった。
「その意気や、良し」
爆発音。
飛びかかった四つの影が、同じ軌跡で、ただし速度を倍にして強制退場させられる。
会場には、もう言葉は無かった。
「……………」
見える範囲に居るものは、見えた。
試験官は、爆発物どころか武器も、ましてや魔法など使っていない。
ただ、理解しがたい速さで、
――殴っただけだった。
場外まで飛ばされた四人がリタイヤなのは、明らかで。
周囲に言葉など、あろうはずもなく。
試験官であるガンダは何事もなかったかのように説明を再開した。
「だが、まだ説明が終わっていない。もう少し落ち着け
得物の使用は自由だ」
得物を持ったところで、お前らに負けることはないと、言外にそう含ませる。
はたして、今年の合格者は出るのだろうか。
皆がそんな恐怖混じりな疑念を抱く中、またズレたやつが一人。
(ああそういえば、早く行かないと、シャンクに置いていかれるかもしれないな)
そんな気の抜けた心情を他所に、空気は張り詰めていく。
「改めて、これより体術試験を開始する。
……闘りたい奴から名乗り出ろ!!」
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