序文― Let's start!―

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 そして、同封された地図の示していた場所である、この人の海辿り着いたのだ。 因みに港町なので、本当の海もあるのだか、余談。 「……おお、呆けている場合じゃないか」 この人の量と珍しさに呆けていたが、早く並んだ方が良さそうだ。 だが、最後尾は何処だろう。 見渡せども見渡せども、うねる人の波ばかりで、一向に見当たらない。 あの誘導係に聴いた方が良いのだろうか。 「おい、テメェ」 不意に声が聞こえた。 まあ、今はそんな事よりもこれからどうす 「テメェ、シカトしてんじゃねぇよ!」 ……ふむ。もしかして、自分なのだろうか。 振り向くと、自分と近い年頃の三人組がいた。 ある意味器用に着崩したローブとジャラジャラした金色のネックレスをかけていた。 む、祖父がこういう奴等のことを『なんとか』と言っていたが……何だったか? 「……む、俺を呼んでいるのか?」 「ようやく気付いたのかよ」 「ふざけやがって」 両脇の二人がおかしなことを言う。別に、冗談を言ったりふざけた覚えはない。 真ん中のやつが、二人より一歩前に進む。 「随分なカッコしてるが、テメェどこの田舎者だよ?」 そう言うと、よく分からないが、揃って笑い始めた。 田舎者……。確か都会から離れた場所に住んでいる人のこと、だったか。 ふむ、なら自分は十分田舎者だな。 「テメェ、家名は何だ?そんなナリだし、どっかの没落家系ってところか?」 家名? そんなものは 「無いぞ」 「………何?」 「そんなものは持って無いと言った」 俺は名前はレドだが、ファミリーネームはない。 ふむ。そういえば祖父は持っているらしいが。あれは祖父のもので、俺のものじゃないから違うだろう。 祖父は大人げないからな。勝手に自分のものを使われたら怒るかもしれない。 「ハァ?家名が無ェだと?」 「ああ」 リーダー格の男が、苛ついたように舌を鳴らした。 「っんだよ。とんだカスじゃねぇか。 帰れよ。ここはテメェみたいな『名無し』が来ていい場所じゃねぇんだよ!」 虫を見るような目で睨み付け、胸ぐらを掴んできた。 あ、 思い出した。 「ちんぴら、だ」 彼らの額に青筋が立った。
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