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鋼のこころ
「おーい秋田!京様が見舞いにきたぞー」
「お、京来てくれたんだ?」
夏休みの昼下がり、友人秋田が怪我を負って入院したと聞いた京は灼熱地獄を我慢しながら病院まで出向いた。
「なんだなんだ個室なのか?」
「まあね」
「で、これ見舞い品な」
京は肩から提げていたバックから次から次へと漫画、ライトノベルなどを机の上に並べていく。
「あの…気持ちは嬉しいけどこんなにはいらないや。てか普通見舞いって果物とか花を持ってくるものじゃないかな?」
「そんなもの持ってきて何が面白いんだ。まったくこれだから最近の若いものは」
「ははは…それよりよく京が来てくれたね?」
京の親しき友人である秋田は彼の性格をよく知っていた。
だからわざわざこんな炎天下の中やってくるとは思いもしなかったのだ。
「妹と二けつしてきた」
「……まさかとは思うけど雲ちゃんが前?」
「愚問だよ秋田くん」
そう。京は病院へ行きたいから送ってくれと妹である雲に頼んだのだ。
しかし妹も妹である。『もう仕方ないな兄ちゃんは…』と言いつつしっかり送ってあげたのだ。
「京……最低だね」
「誰が最高な男だよ。照れるやい」
「そんな嬉しそうに頬を染めないでくれ」
「ところでだ。何でお前は足を骨折したんだよ」
「そうなんだよ……聞いてくれよ京。明日から大会だっていうのにこれなんだ。練習してたら先輩との接触プレーでポキッといっちゃってね」
「なるほどな……」
「あーあ。せっかくスタメンだったのにな」
京は窓際に立つと遠い目で空を眺める。
「どうしたの京UFOでも見つけたのかい?」
「そんな不幸なお前に俺からこの言葉を授けよう」
「え、何?」
「立って歩け 前進め お前には立派な足があるじゃないか!」
「え、何キリッとした顔で言っちゃてるのこの人!? 今一番僕に言っちゃいけない台詞だよねそれっ!? 立派な足どころか両足複雑骨折だわ!!!」
京はすっきりした顔で病室から去っていった。
「え、ちょ京! もう帰るのっ!? お前今の台詞言いたかっただけだろ!?」
京は病院の外の木陰で休んでいた雲と再び仲良く自宅へと帰った。
帰り道お巡りさんに見つかって二重の意味で叱られたとか。
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