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ラーメンの具
どこか哀愁漂うひぐらしの声が日の沈んだ街中に響き渡る。
少しくらいは涼しくなっただろう、と京は玄関の扉を開けた。
「うぇ……あぢぃ」
すぐさま家の中へと戻ろうとする京の背中を雲が押し出す。
「ほーらぐだぐだ言ってないで行くよ。クーラーきいた部屋に四六時中籠もってるからそーなるんだよ」
「何だよ。夏休みなんだからいいだろ別に」
京は文句を言いながら自転車に手をかける。
「兄ちゃん葉ちゃんちすぐそこだよ? そのくらい歩こうよ。ほら行くよもう」
「え、おおぃ」
いつものように雲に二けつをしてもらおうと考えていた京の手を雲が引っ張った。
京は幼なじみである葉の家が経営しているラーメン屋【千‐SEN‐】で夕飯を食べようと雲に提案し、今にいたる。
「まったく兄ちゃん何で50メートルくらいの距離も自転車にのろうとするかな」
「いいじゃないか。文明の利器を使わずに何を使えっていうんだ」
「自分の足だよ。兄ちゃん一昨日の夜中大声で何度も叫んでたじゃん。『立って歩け 前へ進め あんたには立派な足があるじゃないか』だっけ? 兄ちゃんにだって立派な足あるじゃんよ。あれ何だったの? うるさいから夜中はやめてよね」
「何だよ……お前まさか兄ちゃんの部屋に盗聴器でも仕掛けてるのか? 恥ずかしいやい」
「もし私が兄ちゃんの部屋に何か仕掛けるんならそれは間違いなくTM―46だよ♪」
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