厄災の小箱

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これだけの神聖な結界ならば、ヴァンパイアのDNAの混じった鬼助の左腕は、結界に触れればタダでは済まないだろう。 更に、鬼助達に本来流れている〝血〟も合わされば、消し飛ぶと言う表現は大袈裟ではないだろう。 「支局長……これは、まさか」 「ふむ、お前には話したことがあったの、輝壱。 そうじゃ、この中身はまさに厄災、禍。 絶対に奴等には渡してはならんものよ」 2人のやり取りに鬼助は追いてけぼりをくらったためか、ただ玄蔵の言葉を訝しく思ったのか、眉をよせる。 「……厄災なあ。 で、結局何入ってんや?」 「五始祖の更に上、ヴァンパイアの真祖の心臓じゃよ」 真顔の鬼助の耳には、久方ぶりに薪の弾けた音が響いた後にニタリ、卑下た笑みを浮かべる。 「何笑ってるんだ、鬼助」 「ハハハッ……笑わずに居れるかい、真相やぞ? 殺したくて殺したくてかなわん相手のお出ましなんやぞ!?」 「鬼助、気持ちは解るが真相と戦いたいからと言って、仕事の手は抜かんでくれよ?」 「解っとるわ、五始祖も真相も纏めて地獄に送ったるわ!」 「うむ、解ってないが行ってこい」 斯くして、鬼助と輝壱のロシア遠征は始まったのであった。
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