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心地よい微睡みの中に感じる、腹部への圧力。自室に帰った後すぐに眠りに就いたらしい鬼助は、時刻を確認しようと目を開けるが、壁との間に、そして鬼助の上に乗っかる、艶のある黒いショートカットの小柄な女──咲夜が目に写った。
「何しとんねん、アホ」
「あ、起きた。アホはどっちよ、丸一日も寝てたくせに。
義手が完成したから知らせに来たのよ」
「……そんな寝とったんか。
流石は咲夜、仕事がはやいなぁ」
傷の所為でもあるのか、長く寝ていてまだ覚醒しきっていない頭を押さえた後、上半身のみ起き上がらせ、片割れを失った右腕を咲夜の肩へと回す鬼助に、咲夜は頬を朱に染める。
「な、なによぅ……」
「どーせまた、金は要らんから抱いてくれ、やろ」
「うっ……」
唇を歪ませて笑う鬼助は、図星なのか声を詰まらせる咲夜の艶やかな唇を奪った。
「義手つけた後で良いじゃない。
か、片腕じゃ動き難いでしょ?」
「もう止めれんわ」
「ちょっ……徹夜だったからお風呂入ってないのぉ!」
「知るかいな」
鬼助は音符でも付きそうなぐらいにこやかに笑ってそう言って、自身が先程まで眠っていたベッドに咲夜を沈めた後にはもう、二人共その甘い、甘い時間へと溺れていった。
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