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胸下まである長く、手入れの行き届いた黒い髪。
目は赤色で、丁寧に作られた人形がそのまま動き出したかのような端整な顔立ち。
ゴスロリの服が好きで、常に女王様口調な俺様な性格。
コーヒーよりは紅茶が好き、ピンクよりは赤が好き。
けれど、灰色と黒だと灰色が好き。
彼女の仕事は、彼に不幸を売ること。
彼女は知っている。
人間は不幸だ不幸だと言いながらも、さほど不幸ではないということを。
でも“彼女”をここに連れて来たのは正確だったと思っている。
きっと“彼女”の幸福はここにいることだ。
狭く薄暗い17段の階段をのぼり“2人”の住む部屋に到着する。
悲しい笑いが漏れた。
彼はきっとこの先も不幸を食し続けるだろう。
彼女は言った。
「本当に良いのね…?」
あれは、何年前の話だろうか。
彼が背負わなければならない代償はあまりにも大きすぎた。
……彼女は真顔に戻る。
そして、2人が住む部屋のベルを鳴らした。
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