タクミ

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「それにもそのうち慣れるわ。……さぁ、早く続けて」 「分かってる」 続けて、母親と妹の記憶を消した。 それが家族の“不幸”を喰ったということだ。 まわりの人の記憶もそのうち勝手に書き換えられると有花に聞いた。 家族の記憶を消したあと、必要なものだけ持ち家を出る。 そうして、彼は孤独になった。 家は有花が用意してくれた。 もうタクミはそこにずっと住んでいる。 今ではもう色々な“不幸”を食べて吐き気に襲われることはない。 良い意味でも、悪い意味でも彼は仕事に慣れたのだ。 もう何年も彼は不幸を食べ続け、いつからか彼を知る人は彼を“不幸屋”と呼ぶようになった。 彼が人に渡すのは幸福。 引き受けるのは、不幸。 彼は、自分が幸福になることを家族の記憶を消した日に諦めたのだ。
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