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その時、周りは寝ていただけや、抱き上げられたショックで生き返ったなど、色々なことを言われていたが、その時の俺にはどうでもよかった。
でも、今になって、俺はふと思う。
この世界をみて、ふと思う。
もしかしたら、あれは奇跡なんかじゃなかったんじゃないかって。
もしかしたら、あれは俺が起こした偶然だったんじゃないかって。
そして。
もしかしたら、俺の物語は、実はこの時からすでに、始まっていたんじゃないかって。
俺は、そう思っていた。
――――
「晩飯は……今日はコンビニでいいか、台所ごたごたしてるし」
ぶつぶつ呟きながら、俺、河本直樹は玄関で靴を履く。
ここは小さなアパートの一角の部屋だった。
父の都合で、俺は一人、この小さな町『寛木市』に引っ越してきた。
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