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「お嬢様」
「何かしら」
「お嬢様は吸血鬼でいらっしゃるのに何故人間の巫女の墓に花を添えますの?」
「そうねぇ……あの子は妖怪はひねくれてるってよく言っていたからかしら」
「お嬢様の仰る事、よく分かりませんわ。森の中の廃屋にも時々妹様と向かうし、私、お母さんと違ってお嬢様の事、全然分かっていませんわ」
「ホントねぇ……お母さんには家事はするなと念入りに言ったかしら?」
「言いました、が、お母さんですから、空間歪めて時間で遊んで今頃お嬢様のお茶の準備をしていますわ」
「親が親なら子も子ね。言うこと聞かないったらありゃしないわ」
「お褒めの御言葉ありがとうございます。それではいつもと同じくお茶を御供えしますわ」
「……」
「お嬢様?」
「私はひねくれてるから知らない人間の墓にお茶を御供えするのよ」
「はぁ」
「永遠に似た時を生き、いつしか忘れていって、彼女が知らない人間になるのが怖くて私は……」
「やっぱりお嬢様ってよく分かりませんわ」
「多分私は人間が好きだって事よ」
「……わぉです。お母さんが聞いたら驚く台詞ですね。お口チャックしときます」
「貴女も死んだら墓に御供えしてあげるから墓までさっきの私の台詞持って行きなさい」
「仰せのままに、では帰りましょう」
「ええ、帰りましょう。じゃあね……私よりひねくれた素敵な巫女さん、また来るわ」
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