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「あ、上海さん」
『あら、紅魔館のメイドさん……私は人形なのに何時も貴女は丁寧に上海さん、ていってくださるのは何故かしら?』
「上海さんは上海さんだから、でしょうか?」
『よくわからないわ』
「ですね、私もよくわかりませんわ」
『……本当にお母さんに似てないね貴女。私もお母さんには似てないけど』
「上海さんのお母さんはすごい努力家ですよね、幻想郷に知らぬ者はいない人形使い。その技術は長年の努力の結晶である」
『誉めすぎよ、お母さんは何一つ大それた事はしていないわ。ただ普通に人形を愛して、時には奇妙な縁を持った輩と異変解決したり、ただただ、“普通の魔法使い”だったわ』
「普通、ですか。上海さんのその頭に被っている帽子は確かに普通の魔法使いっぽいですね」
『……これはね、偉大なる普通の魔法使いの普通の帽子なの。あの魔法使いは最期まで人間として魔法と向き合い、魑魅魍魎と渡り合い、誰よりもこの幻想に恋してきた』
「恋って、なんなんでしょうね」
『なんなんだろうね、恋って。それが分からないから私はこの帽子を被り続けているの』
「そうなんですか……」
『その魔法使いはお母さんに、恋するってのは愛する事より少々強引になる事だってって言ったらしいわ、人形の私には愛が分からないわ。教えてメイドさん、愛って何?』
「私の愛は……お嬢様を大事に思う気持ち」
『それは忠誠心でしょう』
「違いますよ、愛ですよ。私は従者だけど、強引に外にお嬢様連れ出したりするもの。それはお嬢様が好きで、好きにしたいから。もっとお嬢様と一緒にいたいから。きっと魔法使いの人もそれを上海さんのお母さんに伝えたかったんだと思います」
『…………』
「普通の魔法使いさんは、上海さんのお母さんに本気で恋していたから、最後にそう言ったんです」
『……何でそう言い切れるの?』
「私も“普通のメイド”。恋する乙女ですから、てへっ」
『……ありがとう、メイドさん。貴女と話せて良かったわ』
「私も良かったです。少しはお力になれたなら幸いです。“次は直接、普通の魔法使いさんが恋した貴女の声を聞きたいです”」
『…………』
「せっかく綺麗な顔してるのに、人形の顔してたら台無しですよ。次に上海さんが人形使いさんに会えた時には、うんと人形使いさんを誉めてあげてくださいね?」
『……そうね』
「それでは、また」
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