ゴールを過ぎて

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いよいよ来週に迫った最終開催に向け各馬は攻め馬に余念がない。 その日育斗が調教を終え、車で帰ろうとする所を呼びとめたのは記者の佳織だった。 「ねぇ、育斗くんちょっと時間ある?」 振り返ると後ろに結った長い髪をバタバタと風にゆらし、一瞬モデルかと見間違うほど美しい女性がそこにいた。 あまりまともにしゃべったことも無い佳織がいやに上から目線で来るので育斗は自然と怪訝そうな表情になっていた。 「あ~今日もドロンコだったね。」 ドロンコとは馬場の話でここ数日雨が降りっぱなしでぬかるんでいた。 それにしても佳織は堂々としてた。 おそらく同い年くらいの彼女だが20歳そこそことは思えないくらい大人びている。 たしか父親も新聞記者で子供のころからこの辺をうろうろしていてそこらへんの記者よりもずっと顔が利く存在だった。
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