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「まだ、木村さんがエージェントやってるんだっけ?」
不意に聞かれたこの質問にどんな意図があるのかわからないが、育斗はきっと俺を小馬鹿にしに来たのかと思ったので簡単に返事を済ませ帰ろうと挨拶をした。
すると「ちょっと待て」と言わんばかりに眉間にしわを寄せて
「あんな奴なんかに頼んだって意味ないよ」
と半笑いで言い放った。
なんてことを言うのかと思ったが、
彼女は言葉のトゲさとは裏腹に爽快な表情をしていた。
「私が馬集めてくるからちょっと乗ってみない?」
それは思ってもみない誘いだったが一体どんな意図があるのかわからなかった。
昨年の今頃であればまだいくらか勝ち星もあったが、
1開催に2鞍も確保できない今の俺に何の用があるのかわからなかった。
「嬉しい…ですけど、どうして俺なんかに。」
佳織はなおも笑みを浮かべながら
「困ってるんじゃないの?」
と言い放った。その自信に満ち溢れている表情は恐ろしくも頼もしくもあった。
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