ゴールを過ぎて

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5着の脱鞍所に戻ってきた育斗はいくらか悔しそうな表情をしていたがそこに落胆の色は無いように見受けられる。 『少しは焦った顔でも出来ないもんか』 と内心怒りが爆発している佳織は育斗を今にも殴り飛ばしてやろうかという表情で歩み寄った。 「どこ見て走ってんだよ」 やはり口をついて出た言葉は乱暴だった。 ダメな乗り役にはいくら言っても駄目な事を佳織は父から何度も言われてきた。 『2流の乗り役は言われていることは理解できても実際出来ないんだよ。 もっと酷いのは3流の乗り役で言われていることすら理解できないんだよ。』 育斗は佳織に怒られ、ただただ謝っている。 その表情はどこか身が入っていない弱々ししい表情をしているだけ。 父の言葉の通りならこいつは間違いなく3流だ。 頼んだ自分が馬鹿だったと悟り、佳織はそれ以上育斗に何も言わずに調教師のもとへ謝罪に向かった。
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