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前はこんなんじゃなかったのに。
育斗はふと心の中で漏らした言葉で自分自身が今スランプに陥っていることを理解した。
以前と変わらないと自分に言い聞かせ、納得させていたつもりだったが、やはり自分自身には嘘をつけない。
騎手という職業は芸能人と一緒でずっと売れ続ける人間は少ない。ひとたび暇ができ、売れなくなれば干されて一瞬にして消えてしまう。
それゆえ常に見えない敵、
"干される"という恐怖と戦っている。
育斗は自分が干されていると認めたくない一心で以前もこんなもんだったと言い聞かせた。
そうやっては変化していく周囲の人間の態度をやりすごして来たが…先ほどの視線は決定的に言い訳の出来ない変化であった。
そう…
育斗は今、干され始めている。
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