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「かなめかなめ!」
「……」
ぱたぱたと近寄ってくる軽い足音を聞きながらも、奏芽は目を開けずに寝たふりを決めこんだ。
日曜日の昼下がり。
ほどよく暖かい日差しの降り注ぐリビングでうたた寝。
たとえ小さな同居人に呼ばれようとも、このささやかな時間を手放すわけにはいかない。もったいない。
「あっしゅいんぱくと!!」
「っ!?待て愛希…ぐわっ!!」
そのまま寝たふりを継続しようとした所で耳に飛込んできた『必殺技名』に、奏芽は慌てて飛び起きたが、遅かった。
小さな同居人が放ったやけに綺麗な飛び蹴りが、奏芽のみぞおちに突き刺さった。
「~~~~~っ!」
「おきた?」
ささやかな時間と一緒に意識まで手放しかけている奏芽にはお構いなしに、今お気に入りの特撮ヒロインの必殺技と同名の技を決めた愛希は、無邪気に問いかける。
多分、彼女が小学生の男の子だったら殴ってる。
「あ…きぃぃっ!」
上に乗ったままの愛希を落とさないように気を使いつつも、奏芽は再び飛び起きた。
「危ないことすんじゃねぇよ!」
「だって、かなめがむしするから…」
「ぅ…まあ、それは…俺が悪かった。ごめんなさい。」
もっともな指摘には素直に頭を下げて、奏芽は続ける。
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