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「俺が寝たふりしてたら飛び蹴りかましていいって吹き込んだのはどこのどいつだ?あぁっ!?」
「飛び蹴りじゃないよ!アッシュインパクトだよ!」
「愛希とおんなじこと言ってんじゃねえぇぇぇぇっ!!!」
「かーなーめっ!」
しゃあしゃあと言ってのける凉音に堪忍袋の緒が切れた奏芽が攻撃するより早く、置いてけぼり状態だった愛希が不満げに声を張り上げた。
「…何だよ?」
「かなめはあきとけっこんしてくれないの?」
「………………」
「ほら、ちゃんと答えてあげないと。女性からのプロポーズだよ?」
とりあえず腐れ縁の同居人は後で絶対に殴ろうと心に誓い、奏芽はしばらく考え込むように唸ってから、愛希の目線までしゃがむ。
「あのな愛希、あと十五年して愛希が大きくなって、おっちゃんになった俺でもまだ結婚したいと思ったら、考えてやる。」
「ほんと!?」
「俺はその場しのぎはするけど嘘はつかない。」
目を丸くして問われた奏芽がきっぱりと頷くと、愛希は満面の笑顔で文字通り飛び上がった。
「やったー!すずねすずね!あき、かなめの『こんやくしゃ』になったよ!」
「…は!?」
「よかったねぇ愛希ちゃん。」
「いやちょっと待てえぇぇぇっ!!」
響く怒声を聞いてくれる者はいなかった。
その後、「かなめのこんやくしゃです」と愛希に自己紹介された知り合いに、必死で弁解する奏芽の姿と、傍らで体を曲げて爆笑する凉音の姿が一ヶ月ほど目撃されたとか…
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