piece1:鬼島奏芽

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鬼島奏芽は週に一度、駅前の雑居ビルの五階にある小さな出版社に足を運ぶ。 「いやー…分っからないなあ…」 「何がですか?」 出されたコーヒーに口をつけてから、奏芽は自分が持ってきた写真を嬉しそうに眺めながら首を傾げる編集長に問う。 「見た目ヤンキーにしか見えない君が、なーんでこんな繊細な写真が撮れるんだろうなあ…?」 「西田さん、あんたそれ何回言うんですか…!?」 写真を渡しに来る度に言われる言葉に、奏芽は盛大に顔をしかめた。 祖父譲りの明るい茶髪に、目つきの鋭い茶色の瞳。 不機嫌そうに見えるしかめっ面。 ついでに鬼島という苗字。 自分を構成している要素が好青年とかけ離れていることぐらいは流石に自覚しているが、だからといって他人から改めて指摘されたくはない。 もっとも、初対面でいきなり「君ケンカ歴長そうだね~」と屈託のない笑顔で言ってきたこの西田編集長に言われる分には、彼の人柄の分を差し引いてももう慣れてしまったが… 「鬼島君が来るとね、僕は毎回思うんだよ。ヤンキーはみんな、根は純粋なんだって。」 「一応言っときますけど、俺ヤンキーじゃないですからね!?そりゃ…確かに多少ケンカはしてきましたけど、自分から売ったりもしてねえし、小中高と忌引以外は無遅刻無欠席でしたからね!?」 ひとしきり主張してから、奏芽は長い長いため息をついた。 それから本題に戻る。 「んで?今日はどれ使ってくれるんですか?」
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