piece1:鬼島奏芽

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「そうだねぇ~…」 問いかけに、西田は若干眉を寄せながら改めて写真に目を通す。 「これと、これと……あとは…これかな?」 「…これとかは…どうですか?」 「これはねぇ、個人的にはすっごい好きだけど、雑誌で使うにはパンチが足りないね。」 密かに自信のあった写真を指差すと、西田はあっさりすっぱりと言い切った。 「そうですか…」 「だからこの写真もらっていい?」 「それはいいですよ。データはとってあるし。」 「いい時代だよねぇ。昔は現像するのにも時間かかったのに…まあ、それはそれで味があってねぇ…やっぱフィルムは」 「じゃ、また来週に。」 西田の談義の長さは嫌と言うほど経験してきているので、奏芽は早々に切り上げようとカバンを持って立ち上がった。 「ああ、鬼島君、」 「はい?」 「この間写真で見せてくれた娘さん、今度連れてきてくれない?」 「娘じゃなくて同居人の親戚なんですけど…じゃあ、次は土曜でいいですか?小学生だから平日だと連れてきづらいし。」 「うん。よろしく~。」 「でも、何でまた?」 疑問に思ったことを尋ねると、西田は真夏のひまわりのように笑った。 「僕はねぇ、奥さんと娘と可愛いものが大好きなんだよ。」 「……………………………そうっすか…」 満面の笑顔で言われた言葉に不純があるか否かの判断は、奏芽は保留することにした。 代わりに、何かあったら警察沙汰になろうとも、この一見裏表のなさそうな編集長を殴り倒そうと心に誓って、小さな出版社を後にした。
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