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「そうやなぁ、俺は好きな子が気付かへんなら愛を注ぎ続けるで。折角生まれた想いやから大切にせんとな」
「……君でもまともなこと言うんだね」
「俺のこと何やと思ってたん?!」
目を丸める俺にアントーニョが声を張り上げると、フランシスが俺の肩をぽんと叩いた。
「お兄さんもアントーニョの言う通りだと思うよ。あいつの鈍さは今に始まったことじゃないし、それに相談しても好きには変わりないでしょ?」
「うん…」
「だったら諦めずに頑張ればいい。ていうか、少しでも優しくしてやりなよ。あいつが機嫌悪いと俺に飛び火し」
「てんめぇ、フランシス!!俺の教科書に落書きしやがっ…て……」
急に大きな音を立てて開いた扉に視線を移すと、そこには俺の愛しい人が立っていた。
「アーサー」
そう目を細めると彼は俺を見てびくりと肩を揺らした。愛しいアーサーは俺に嫌われていると勘違いしているから。そうというのも俺が辛辣な言葉を吐くのが原因なんだけど。
「わざわざ文句言いに来るなんて随分暇なんだね」
彼に会えて嬉しいのに気持ちとは裏腹な言葉を紡ぐ口。言ってはいけないと分かっているのに。
「暇なわけじゃ…」
目を伏せながら、うるうると瞳を潤ませる可愛いアーサー。彼の泣き顔は色々とそそるものがあるけど、たまには彼の笑顔も見てみたい。
この気持ちを伝えたら彼は笑ってくれるのかな。そうアーサーを見据えると彼はまたびくりと肩を揺らした。それが気に食わなくて。
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