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「俺は君みたいに暇じゃないから失礼するよ。フランシス…」
「ん?」
「助言ありがと」
ああ頑張れよ、そう背後から降る言葉を耳に収めアーサーが開け放った扉をばたんと閉めた。だから気が付かなかった。
「何なんだ、あいつ……」
彼が辛そうに顔を歪めたことを。
アーサーは唇を噛み締めながら、アルフレッドによって閉められた扉に視線を送った。そんなアーサーにフランシスは溜め息をつく。
「攻防戦はいつまで続くのかね」
「何のことだよ」
「いや、こっちの話」
坊っちゃんも大変だね、そうフランシスが笑いかけるとアーサーは不思議そうに眉をひそめた。
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「何で素直になれないんだろ」
昼休みの出来事を思い出し、その情けなさに勢いよく机に突っ伏す。ごちりと額から厭な音がしたがそんなことはどうでもよかった。窓から差し込む穏やかな夕日に煽られ、落ち込みが増していく。忘れ物に気付いて戻ってきたはいいが、どうも俺は感傷的になっているらしい。
俺はアーサーが好きだ。多分物心ついた時には好きだった。幼なじみで兄代わりだったアーサーとはいつも一緒にいて、彼は本当の弟ように愛してくれた。
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