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でも、時を重ねるにつれてそれじゃ物足りなくなった。彼の背を追い越して、俺の胸に収まりそうな彼がいとおしくなった。だから弟というレッテルを剥がしたくなった。弟としてではなく、一人の男として見てほしかった。
でも、それが上手く言葉にできなくてつい酷いことを言ってしまう。彼のことがこんなに好きなのにどうしてうまくいかないんだろう。
「……アーサー」
消え入るような声で愛しい彼の名を呼ぶ。この気持ちが伝わってしまえばいいのに、なんて乙女くさいことを考えながら外を眺めていると
「呼んだか?」
廊下から聞き覚えのある声が聞こえた。
「あっ、アーサー?!」
「何だよ。そんなに驚くことねぇじゃねぇか」
そこにいたのは紛れもなく俺の意中の相手だった。アーサーはそんなに予想外の反応だったのか、少したじろいでいた。だが昼休みのような戸惑いは感じられずほっと息を吐く。
ていうか窓側の席にいたのに何で聞こえたんだろ、と訝しむと彼は躊躇ったように教室に足を踏み入れた。
「なぁ、たまには一緒に帰らないか」
そう目を伏せながら呟く様はすっごくたまらない、って一緒に帰るだって?!これは夢かい?!そう頬をつねるとやっぱり痛くてアーサーは何してんだと首を傾げた。
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