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痛みを感じても信じられない自分がいる。アーサーは最近俺と距離を取っているから話しかけてくること自体稀で、一緒に帰るなんて有り得なさすぎる。
「君、からかうなんて悪趣味だね」
そう告げると見開かれる彼の両目。願ってもない誘いなのに気持ちとは真逆なことを言う口をはっと押さえると、彼は声を震わせながら静かに笑った。淋しそうな切ない笑みに胸がずきりと痛む。
「だよな。俺なんかと帰りたくないよな」
悪かったな、そう踵を返す背中はとても辛そうで、そんな彼を見たくなくて
「待ちなよ!」
彼の腕を思い切り引いた。急に腕を引かれたアーサーはぐらりとよろけ、俺の胸の中にすぽっと収まってしまった。
俺より年上なのにその可愛い肢体にどくんと心臓が跳ねる。こんなに密着したら心臓の音が聞こえてしまいそうだ、と鼓動の速さを認識していると彼は気付いているのか、いないのかこてんと首を傾げた。
「こ、こんな嘘に騙されるなんて君は実にばかだな!」
「なっ…!」
苦し紛れにそう吐くとお前こそ悪趣味なことすんじゃねぇよばかぁ、と眉間に皺を寄せながらも嬉しそうに笑った。彼が可愛すぎてどうにかなってしまいそうだ。俺は今変な顔をしていると思う。
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