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「って何すんだよ!」
それが恥ずかしくて彼の目を手で覆う。ぐいぐいと押し返そうとしているが人一倍腕力が強い俺に敵うわけもなく、俺の胸の中でじたばたと暴れた。それと同時に手に触れる彼の華奢な指に体温が上がっていく。恋が病とはよく言ったものだ。病と勘違いするほど、彼に熱を出しているのだから。
「ああ、もう行くよ!」
彼に顔を見られるのも触れられるのも堪えきれず、机の横に置いていた鞄を乱雑に肩に引っ掛けた。教室から逃げるように足を向けると、後方から待つように促す声が聞こえたがとてもそれどころではなかった。
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「待てよ!」
早々と先に進む俺に追い付いたアーサーは俺の腕を掴み、進行を妨げた。元ヤン(俺は知らない)だからか思ったより強い引きに体勢を崩しそうになりながらも何とか立ち止まる。
「もう…何だい」
少し触られるだけでどくんと跳ねる心臓。腕からじくじくと伝わる熱に顔が火照っていくのがわかる。今は冷え込む季節だから自然現象と勘違いしてくれるといいな、とマフラーに顔を埋めるとアーサーはそんな俺に視線を送った。
「ったく、しょうがねぇな。これ貸してやるよ」
そう口にしたかと思うとアーサーは鞄から取り出した可愛らしい桃色の耳当てを俺の耳につけた。その様を見て、うん可愛いという始末。自分より図体のでかい男にそんなことを言うなんて夢を見ているとしか思えない。アーサーの方がよっぽど可愛いのに。
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