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【かまえよ、ばかぁ】
「新着メール0、か……」
いくら待っても届かないメールに溜め息をつき、ぱたんと携帯を閉じる。その小型の機器をベッドに放ると自分も同じように身体を投げ出し、放った携帯を手繰り寄せた。こんな姿、ワイン野郎に見られた暁には数百年間笑いのネタにされるに違いない。でも、俺はこんな自分を制御出来ないほどに不安が募っている。
アメリカに好きと言われ、俺達は晴れて恋人になった。だが、あいつは付き合う前と変わらず俺を罵っている。確かに俺としてはその方が居心地がいいし、急に態度が変わったらどう対応していいか困る。
でも、
「メールくらいしろよ、ばかぁ」
「君、昼間から寝てるなんて不健康だね」
「!?」
がばっとベッドから跳ね起き、突然現れたアメリカにぱくぱくと口を開閉する。そんな様にアメリカはくすりと笑うと開いたままの携帯をベッドから掬い、ぱたんと閉じた。
「お、まえ何でここに…?」
「何でってそろそろ君が寂しくなる頃だと思ってさ。世界会議で会ってるとは言っても、そんなに話せるわけじゃないから……ってイギリス?」
俺は衝動に任せてアメリカに抱きついた。こいつは俺が寂しがりだと分かってこんなことをしたのだから怒らなければいけないのに。
「ふ…ぇ……ほっとく…なよ、ばかぁ」
思っていることとは裏腹にぽろぽろと頬に涙が伝い、本音が漏れてしまった。こんな情けない姿を晒す男を誰が、かつての大英帝国だと思うだろう。止まらない涙を拭う気力もなくてひたすらアメリカにすがり付くと、アメリカは俺を抱きしめ頭部にそっとキスを落とした。
「ぅ…め、りか?」
「そんなに泣くほど寂しかったのかい?」
「なっ、そんなわけあるか、ばかっ!」
「やっぱり君はそうでなくちゃな」
あまりにも爽やかに笑うアメリカに拍子抜けし、涙が止まってしまった。
だから、
「イギリス、大好きだぞ」
昔のように無邪気に笑うアメリカに俺は思わず笑みを浮かべてしまったんだ。
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