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「焦らなくても充分間に合うから大丈夫だよ。」
そう言って私が準備が終わるまで待っててくれる優しい人。
焦らなくてもいいと言われても、見られてるといつも以上に焦りながらも、鞄に全ての教科書を突っ込んでは『おまたせ』と言っては金久保の隣に立つ。
可愛らしい顔からは考えないくらい身長が高いわけで自然と上を見てしまう。
「じゃあ、行こうか」
そう言うと私の歩幅にあわせて歩いてくれる金久保。この学校には女子が私一人で、周りに知り合いとかがいなくて偶然席が隣になった時から私に気をかけてくれて。
…弓道部に入ったのも誉君に誘われたからなんだよね。
『…あっ!!』
いきなりはっとさっきの事を思い出しては歩いていた足をピタッと止め金久保の方を驚いた顔をしたまま見ている私に「どうしたの?」と首を傾げてこっちを見ている誉君。
ブンブンっと慌てて左右に首をふれば誤魔化すように苦笑いを浮かべて『なんでもないよ』と言えば彼はそれ以上何も聞かずに笑顔を浮かべて歩き始める。
それに続いて誉君の背中を見ながら歩いていく。
『ありがとう』
この学校に馴染めたのも、友達が出来たのも、部活を頑張れるのも貴方がいたから、いつも貴方に助けられていたね。
まだ、貴方に直接言う勇気はないから貴方の背中にそっと言葉を呟いた。
その後に風が言葉をさらって言って貴方のもとまで聞こえているのかもと思ったけど、それもそれでいいかな。
-君も一緒にやらないかい?-
(君はまだ気付いてないかな?ありがとうって言いたいのは僕の方なのに。)
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