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「はい……今日の分のミルク」
「おぉ、ありがてぇ」
俺が人語で話す唯一のお相手ってのが、このおっとりとした淑女。秋風 美宮さんって方だ。どうやら繁さんと同じ学び舎に通ってらっしゃるようだ。
「この前の尾行……意外と面白かった」
「先輩のお出かけの後着いてったってやつっすね?」
「うん……。あんな風にみんなと頑張るの……好き」
「そりゃあ、ええこっちゃ」
「最近のかわばた……どう?……疲れてない?」
うぅんと唸り、ミルクをペロリと舐めてから答える。
「いつもと同じっすね。あの中年女に無茶なこと言われてばっかりだ」
溜め息混じりにそう伝えると、美宮さんはふぅんと興味なさ気な息を吐く。
「かわばた……きっとそのうちいいことある……」
「いつもの勘ってやつっすか?」
「そう……勘」
何でか知らないが、美宮さんの勘は良く当たる。今まで俺の前で勘と言って予感したことは大体現実になっているのだ。
「へぇ、今度はどんなことが起こるんすか?」
「…………何かのくじが当たる」
「何のこっちゃ」
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