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中にいた3人は各々の好きなことをやっていたが、繁の登場に彼の顔を見た。
通販で買った筋トレマシンを使っていた男、五十嵐 甲太は繁の顔を一目見て状況を察した。
「お前、また夕飯ピンチなのか」
「あぁ、そうだよ。だからオレは帰るよ」
元気の無い声で呟くように答えた繁は、ヒラヒラと手を振って扉を閉めた。
繁の去った部屋に、先程とは違う沈黙が漂う。そして1分……
「行ったわね?」
何処から運んだのか分からないベッドに寝転んでいた一 輪花は、扉を凝視する甲太の背に問い掛ける。
「大丈夫、だな」
甲太がそう言った瞬間、3人は一斉に部屋の中心に配置されたダイニングテーブルを囲んだ。そして、輪花の手には紙で作られたケースが握られていた。ベッドに寝転びながら隠していた代物だ。
「よしっ、シゲちゃんがいないうちに平らげちゃいましょ」
輪花はとても嬉しそうにケースの封を解き、蓋を開ける。中には種類の違うケーキが3つ入っていた。3人の口から、おぉと声が漏れる。
「……許せ、かわばた」
光の鈍い眠たそうな眼の秋風 美宮は、宙に向けて手の平を合わせる。
「まぁ仕方ないっしょ。貰ったのは元々3コだったんだから、結局誰かは食えなかったんだ。争いにならなかっただけマシだぜ」
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