アンダースカート

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 甲太がモンブランの処理係に任命されていた頃、繁は豚の生姜焼に使う材料を買い集めていた。  学ランの前ボタンを開け、中に公国軍のパイロットスーツのようなジャージを着ている彼は、少なからず周りの視線を集めていた。 「ウ~ン、キャベツと生姜も買うとなると、豚肉を妥協せざるを得んな。もう少し財布の中身が潤っていれば……クソッ」  ぶつくさと独り言を吐き出す繁だが、それで財布にMr.福沢がログインするわけではない。そう思ってしまい辛かった。 「あらあら、おシゲじゃない」 「あ、ニノのお姉さん。こんにちは」  繁に声を掛けたスーパーの店員は、アンダースカートのメンバー、一 輪花の姉である一 羽鶴(にのまえ はつる)。現在女子大の1年生だ。 「名前で呼んでよ。誰かの姉で定着するのって、ちょっと寂しいし」 「そうですか?じゃあ、こんにちは羽鶴さん」 「何か他人行儀に聞こえる……」  じゃあどうしろってんだよ……。繁は口にはしないものの、小さく溜め息を漏らした。 「じゃあ呼び捨てにして」 「したらニノに殺されますし、年上を呼び捨てってのはちょっと……」 「大丈夫よ。おシゲなら気にしないし、輪花には私から言っとくから」  ケラケラ笑う羽鶴だったが、彼女のエプロンのポケットにある割引シールをおばちゃんが狙っていると分かった。瞬間、繁は彼女に仕事に戻るよう伝えた。  
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