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最初は影も捉えられなかった。誰が乗っているのかすらもわからなかった。完敗だった。
俺は心の中にあった小さな甘えを捨てた。帰ることにのみ神経を集中させた。帰るルートから信号の変わるタイミング、自転車の漕ぎ方、色々なことを調査した。
その甲斐あって、俺はついに帰宅部のエリート共を見つけた。
開かずの踏み切りで止まる連中を見て、胸はどうしようもなく高揚した。ついに自分の実力を発揮できると舞い上がった。
……結果は無惨であった。圧倒的な大敗。話にもならない差だった。
ちくしょう! 今思い出しても自分に腹が立つ!
その悔しさといったら筆舌に尽くし難く、俺は更に自分を追い込んだ。坂道ダッシュ、筋トレ、イメトレ、自転車の改良、メンタルの強化、徹底的に自分を虐めぬいた。
由実からすれば俺の姿は異様に映っただろう。しかし男には譲れない誇りがある。こればっかりは引けなかった。
No.1の座が欲しかったのだ。
ある日、信じられない出来事が起きた。何と由実までもこの戦いに足を踏み入れたのだ……!
甘い考えなら止せ、と俺は由実をひっぱたいた。すると由実は強い眼光で、俺を叩き返した。
その姿に俺は思わず武者震いした。こいつ本気だな……と。
由実も最初は話にならなかった。しかし負けず嫌いな由実は自分を追い込んだ。その甲斐あってスピードは格段に上がり、上位集団に姿を見せるようになった。
ズボンは邪魔になる、と由実はスカートのまま自転車を漕ぐため、男性陣から絶大な人気を誇っている。かくいう俺も、大好きなスタイルだ。
そうしてついた異名は「パンチラの由実」だ。
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