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問題はたかしではない。もっとレベルの高い奴らがいるのだ。
俺はまだ優勝したことがない。あと一歩のところまできているのに、あと一歩がどうしても届かない。
今日こそは……。
「よう」
「た、立ち漕ぎのまさる……!」
意気込んでいると、ある男に肩を叩かれた。その男の名はまさる。この大会最強の男だ。
まさるの走りは、力強いが無駄がなく、理想的なものだ。異名でわかるように、まさるは立ち漕ぎを基本としている。
立ち漕ぎしか行わないという彼の考えは徹底したもので、まさるの自転車にサドルはない。
鍛え上げられたふくらはぎは隆々としており、一見すればサッカー部のようにすら思える。
「ずいぶんと気合いの入った顔をしてるな。俺に勝つつもりかい?」
「もちろんだ」
「精々たかしらないように気をつけることだな」
たかしる、とは骨折すること意味する。
「あんたが最強の時代は終わりだ! 今日は俺が勝つ」
「やってみろよ」
睨み合い火花が散る。
王者は傲慢なくらいがいい。その方が潰しがいがある。
今日俺がNo.1になる。
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