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ひたすらに、一心不乱にペダルを踏みしめる。その度に自転車はスピードを上げていく。
このレースの重要な点は三つある。一つは信号に引っ掛からないこと。
もう一つは開かずの踏切。この踏切はどのルートで行こうとも、通らなくてはならず、引っ掛かると大きなタイムロスになる。
最後に坂道。アパートの目の前でそびえ立つ試練の道をどう乗り切るかが重要だ。
十メートル先の信号の色が黄色に変わる。行くべきか行かないべきか。無論行く!
俺は更にスピードを上げ、信号を目指した。
「っ!」
しかし間に合わず、信号の前で辛酸を舐めることになった。
くそ……! やっちまった。後ろから追いかけくる奴は見えないが安心はできない。皆独自の道を持っているのだ。自分に適し、それでいて早い道を。
信号が青色に変わる。その瞬間に走り出す。
時間くっちまったな。これはまずい。一つのミスでさえ勝利は遠退く。それがこの戦いだ。
腕時計をちらりと一瞥する。
時間が微妙だな……。この分だと開かずの踏切に全員引っ掛かるんじゃないか……?
会議か何かがあるらしく、今日の学校はいつもより早く終わった。そのせいで、普段なら回避できる開かずの踏切に引っ掛かりそうだ。
これがどちらに転じるかだな……。
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