お家へ帰ろう

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やっぱりか……。 開かずの踏切は閉じられていた。ここで足止めをくらうことになりそうだな。 それも気に入らなかったが、何よりも気に入らないのが、俺より先に二人の男がいたことだ。 「やあ、早いじゃないか」 一人はサイバーじゅん。電動自転車乗りだ。原則として自転車に限られているため、電動自転車は物議を醸し出した。 俺は反対だったが、結果的に許されることになった。 そしてもう一人は…… 「どうした? もうへばったのかい?」 「立ち漕ぎのまさる……!」 まさるは地に足をつけて、座っていなかった。 電動自転車を認めようと強く言ったのはまさるだった。自信からだろう。それをねじ伏せ、自分の力を誇示したかったに違いない。 少しだけ乱れた息を整える。本当の勝負はここからか……。 踏切が開くのを待っている間にも、何人かの奴がやって来た。 その中でも特に気をつけなくてはならないのが、二足歩行のかずと、芦田兄弟、補助輪の守くらいだろうか。 芦田兄弟は双子であり、二人乗りをしている。にも関わらず早い。芦田兄弟曰く、二人の方が早いらしい。よくわからん話だ。 てるの姿が見当たらない。大方何処かでちんたらしているのであろう。奴のスピードはちんかすレベルだ。 次にやって来る人間の存在に気付き、全員が後ろを振り返った。 その人物とは、パンチラの由実である。髪と呼吸とスカートを乱しながら由実はやって来た。 皆の視線は確実に一点を捉えていた。 赤色とは大胆な……。 ふと横を見ると、座らないことで有名な立ち漕ぎまさるが、本来ペダルのある場所に腰かけていた。 立ち漕ぎのまさる……! あともう少しで開くという頃になって漸くたかしが姿を現した。 「おいたかし、遅かったから心配したぜぇ?」 と、補助輪の守が笑い飛ばし、皆もそれにつられるように笑う。 たかしは気恥ずかしそうに声をあらげる。 「うちの担任、終わるの遅かったんだよ!」 「素直に諦めたら良かったのに。どうせお前には無理だよ。チキンのお前じゃあなぁ」 「……言ってろ」 俺の挑発に、たかしは乗らない。覚悟を決めたような表情だ。 どういうことだ……? たかしはおもむろにポケットに手を入れ、何かを取り出した。 なんだと……! ハサミであった。
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