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「こんばんわ」
「あ、こ、こんばんわっ」
急に当人が現れたこと
自分に向かって微笑んで声をかけてきたこと
思った以上に低い、でも心地良い声だったこと
それらに驚いて返す声が思いきり裏返った。
「もしかしたら、見学希望の方ですか?」
「え!?け、見学?」
見学、そういえば何か習い事をしてる家みたいだと思ってたことに気付く。
「ここにずっと立ったはったみたいやから、ウチに用事かと思て声かけさせてもうたんやけど、違うんやったらえろうすいません。」
少し申し訳なさそうに眉尻を下げる白い顔。
やっぱり近くで見ても白い、透き通る白い肌が。
「いえっ、見学、見学希望なんですっ、あのっ」
思わず勢いこんだ自分に驚いたように目を見張り、でもすぐに目を細めて柔らかく微笑って。
「そうですか、今日はもう稽古終わってしもうたから話だけでも中で、良かったら。」
「は、はいっ!」
手招く指に見とれて一歩中へ。
「あ、申し遅れました。嵯峨野川島流六代目家元、川島明ノ丞と申します。」
「あ、田村、田村裕と申しますっ」
結局何の流派だったのか、自分がその答えを知るのはもう少し先の話になる。
end.
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