133人が本棚に入れています
本棚に追加
って何思い出してんだ、俺
矢吹は俺の顔覗き込み、顔色を伺っていた
「怒らないでくだパイ」
「…怒ってねぇよ」
矢吹に背を向け、台所へ向かう
お腹が空いてるわけではなく、逃げ出したかった
なぜなら、今、顔が赤いのがすごく分かる
(…うれしい)
矢吹が可愛いと言っていたのが自分だったという嬉しさもあるが、一番嬉しかったのは、自分の出ている番組を見てくれたこと
いつも撮影の時、矢吹が見てくれるかもと思い、カメラを意識してしまうことが多々あった
(俺、キメすぎてなかったかな)
今更ながら、恥ずかしく思う
帰ったとき、矢吹は笑っていた
あれは自分のキメ顔を笑っていたのではないだろうか…
喉が異常に渇き、冷蔵庫を開けようとしたら、後ろから抱き締められた
「…なに?」
「おかえり」
意味が分からない
おかえりは帰った時に聞いている
分からないというのが顔に出ていたのだろう
「顔みて言ってなかったから」
矢吹はそう言葉を付けたし、意味を理解した
耳元で、亀が一番可愛かったよ、と囁かれ、心臓が早くなる
いまさっきまで感じていた不安はなくなったが、…恥ずかしくないのだろうか、いつも直球すぎる
耳赤い、と笑われ、耳に舌を入れてきたので、調子に乗るな、と一喝する
こいつは鈍感で、いつも不安になり、苛つかされる
けど、不安や苛つきをすぐに消すくらい俺のことが好きなのが伝わるから、離れられない
「隼人…、」
名前の呼んだだけだが矢吹は俺が何を望んでいるのか分かったのか、ニヤッと笑い、キスをした
鈍感なのに、俺のこと分かってて…、
ああ、こいつに会えてよかった
もしあの時会って居なかったら
って思ったら、勝手に涙が溢れた
「…どうした?」
鈍感な隼人には分からないよ、と言うと、少しキレ気味になった
乱暴にキスする隼人が可愛くて、愛しくて、涙は嬉し涙へと変わる
最初のコメントを投稿しよう!