蝶羽〈アゲハ〉

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駅に着くと私は、最近引っ越したばかりの真新しいマンションに帰って来た。 暗いシンとした玄関でパンプスを乱暴に脱ぎ捨てる。 重い脚を引き摺るように中に入るとリビング、部屋に電気を付けた。 仕事用の鞄をソファに置くと休む暇なく浴室に行きシャワーを浴びる。 「はぁ…今日もまだまだ終わらない…か…」 汗を流すとバスローブを羽織り、直ぐに化粧に取り掛かる。 今回は念入りに。 付け睫を付けて唇にはグロスを伸ばす。 髪もアイロンで巻き、バスローブを脱ぎ捨てて丈の短いワンピースを着込み、上にコートを羽織る。 「『蝶羽』完成。」 昼間とは全く違う風貌を鏡に映し出して小さく呟いてみる。
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