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ふと目をやると、湖の対岸に一人の男が歩いていた。先程の水車小屋の
番人に違いない。
頑丈な体つきではあるが白い物の混じり始めた髪とひげは、彼が、決して
若くはないことを物語っていた。
救いを求めるため声をかけようとしたが、あまりの疲れと人間を見つけた
安堵感からか、
私は声を発することもなくそこに座り込んでしまった。
水車小屋の番人は、古ぼけて朽ち始めた木の桶を使って、水を運んでいた
。
しかしその水は底からしたたり落ちて漏れてゆく。そして小屋につく頃に
は、
その水は歩いた跡の地面を濡らすために、桶の中身は、一度で運べるはず
の量の半分にも満たないだろう。
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