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私は番人の後を追う力もなく、その行為をただ見つめていた。
そこに、しばらくすると、白い木綿の服を着た少女が、あらわれた。
腕には軽い素材で出来た真新しい桶を軽々と振り、小声で歌いながら、踊
るような足つきで湖の畔にやってきたのだ。
汚れなきそのほほえみは太陽の光を思わせ、小さな唇からもれる歌は、小
鳥のさえずりを感じさせた。
私は美しいその光景に見入っていた。
彼女は、幸福そうな瞳を輝かせ、手にした桶で水を汲むと、もと来た道を
帰ろうとした。
と、そのとき、うなり声とも、怒鳴り声とも区別のつかない大声が響きわ
たった。
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