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夢の中もぼんやりとしているけれど、世界の狭間にあるというこの城も薄暗くぼんやりとしていて、夢の中と大して変わらないとロクサスは思う。
ここ数日よく夢を見る。
でも夢の内容はよく覚えていない。楽しかったような気もするし、ひどくつらかったような気もする。ただとにかく毎晩夢を見るということだけが記憶の中に残る。もっとも、忙しい日々をすごしていれば忘れてたしまう程度の記憶であった。
夢のせいて眠りが浅いのか頭がひどくぼんやりとしていて重い。ベッドから体を起こそうとしたとき、突然自分の顔を覗き込んだ顔に驚いて反射的に体を起こす。
「いてっ‐」
その結果、相手に思い切り頭突きを喰らわせることになってしまった。赤い髪をした彼はぶつかった額を押さえながらしゃがみ込む。ロクサスは呆れたようにため息をつくと言った。
ロクサス「いきなり顔を出すからそういうことになるんだよ、アクセル」
アクセル「謝罪は無しかよ?」
赤い髪の彼‐‐アクセルは口をヘの字に曲げながら立ち上がるとベッドの上に座ったままのロクサスを見下ろす。
ロクサス「あるはずないだろ。寝起きにいきなり顔を出す方が悪い」
アクセル「せっかく長時間の任務を終えて戻ってきた親友にその仕打ちか!」
ロクサス「お前と親友になった覚えはない」
ロクサスはベッドから降りると、アクセルを無視するように背中を向けて黒いコートを身にまとった。親友だとアクセルは言った。しかしそんなものは人間の真似事に過ぎないただの遊びで、心のないノーバディである自分達には存在するはずのない関係だ。ただし、機関の中でロクサスがアクセルと特別に親しく…いや、他のメンバーよりは親しくしているということは紛れも無い事実であったし、その関係をなんと表現するべきなのかはよくわからなかった。
ロクサス「で、何の用だ?」
アクセル「ゼムナスが、呼んでる」
尋ねたロクサスにアクセルは答え、ロクサスのベッドに腰掛けた。
ロクサス「マールーシャ達は?」
ロクサスが振り返って尋ねると、アクセルは眉をひそめ少しうつむく。
ロクサス「お前と一緒に帰ってきたんじゃないのか?」
さらに尋ねたロクサスにアクセルはゆっくりと顔を上げ、ロクサスをじっと見つめた。その視線に居心地の悪さを感じてロクサスは目をそらす。
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