1人が本棚に入れています
本棚に追加
昼の駅前には学生達がわいわいはしゃぎながら歩いていた。
そこを息を切らし汗水たらしながら走る私。
妹が入院している病院は他の病院の面会時間より早く閉まってしまうのだ。
今日は平日だから5時半には受付が終了してしまう。
急ぎに急いで正面玄関に到着した時には5時20分を過ぎていた。
入ってすぐの椅子のところに茶色がかった髪を後ろに束ねた小さな頭が見えた。
その頭がゆっくりと私の方を見て入院中だというのにもかかわらず体に飛び付いてきた。
『翠姉!』
ガバッ
うっ…体当たりはちょっと…(-.-;)
翠『ちょ…ゆう!病院内は走っちゃだめでしょ!それにゆうは喘息なんだから…』
と注意する。
ゆう『だってだって!今日翠姉来るの遅いんだもん!来ないんじゃないかと思って…』
そこで言葉は止まり代わりにしゃくり声が聞こえてくる。
本当に泣き虫だ…
『はいはい。私がわるぅございました。』
と私が謝ると表情は一変して満面の笑みに変わる。
この笑顔…
そこで鈴から貰ったミントアイスの存在を思い出す。
勿論バックに入れておいたそれはべちゃくちゃになっていた。
翠『あちゃ~。せっかく貰ったのに…』
ゆうもバックの中を覗き込み『あらら』と一声もらす。
翠『捨てるしかないか…』
人から貰った物ということで多少罪悪感があるがどうしようもないので近くのゴミ箱に捨てた。
ついでに時計を見る。
時刻は5時半になろうとしていた。
翠『ゆう。そろそろ病室に戻ろう。お姉ちゃんが送ってあげるから。』
ゆう『うん…』
いつもと違い少し元気がなかったが時間も時間なのでとりあえず病室に向かう。
チーン。
エレベーターが降りてくる。
三回のボタンを押し『閉まる』と書いてあるボタンを押す。
短い沈黙。
チーン。
エレベーターが三階についたことを知らせる。
ちょっと急ぎめで降り、ナースセンターで受付を済ませ突き当たりの307と書いてある病室に入ろうとしたとき―
ゆう『ぃゃ…』
それは本当に小さな声だった。
静かな病院内の中でなければ間違いなく聞こえなかっただろう。
私は足を止め聞き返す。
翠『?…何?』
ゆうは下を向いたまま黙っている。
翠『ねぇ。どうしたの?』
再度私が問い掛ける。
それでも反応がない。
翠『言わないとわかんな…』
そこで止まってしまった。
ゆうは涙をポロポロたらし泣いていたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!