平原の王

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 北西の町、ザイル  鉱床を持つ山々に囲まれ、金属の精練技術を高めてきたこの町は、南の街道より外は人外の世界のこの大地で、およそ800年前に、初めて他の集落への移動を可能にした。  しかし、なぜこの町に金属の精練技術が伝わったのか、知るものは誰もいなかった。  だが、この町の誰もが 『牙も爪も無い人間が、この世界で生きて行けるよう、私がいなくなってもこの世界で生き残れるよう。』  光の女神、シャナが与えた人類の希望だと信じていた。  新しい血を求めなければ、村は絶える。  遥か昔の長老達が、幾つもの危機を乗り越えて達した真理だった。  ザイルの男達は、15歳で成人を迎え、伴侶を求めて旅に出なければならない、新しい血を求め、ザイルの血を絶やさない為に。  成人の儀式は年に一度行われ、自分で鍛えた武器を持ち、町の外を歩くモンスターを一体倒して来なければならない。  これは、この町の経済が、金属製品の輸出で成り立っていたため、行商に出る男手と町を守る男手、強い男を育てる為に行われる催しだった。  だが実際には、ひとりでモンスターを倒して持ってきた者はおらず、追い払っただけでも上出来だった、逃げ帰って来てもまあまあ、不運な事に戻れなくなった男も多い。  ただ、鉄の武器を持たない集落でも、多数対1ならモンスターを倒す事も可能だった、食糧の補給や町を護るためにモンスターを倒した話もある、石オノや、黒曜石の矢、木を削っただけの槍で。  人間は唯一協力する事で生き延びられる。
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